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五 ため池の漁

 稲の収穫作業が終り、麦まきの作業も終った晩秋から冬にかけて、あちこちのため池で池干しが始まる。池干しの目的は、溜った砂泥の除去とメンテナンスである。池干しの実施は、毎年や数年毎と、ため池によって異なる。

池干し(茶屋原池)
 ため池の入札制度が昔から行われている。ため池でコイを育て、池干し時に漁を行う権利である。権利を得たグループによっては、フナ、ナマズ、タモロコ(田バヤ)、ウナギ、スジエビなどの漁も行っている。

池干し(深沼新池)
◆コイ・フナ・ナマズの漁
 コイなどの捕獲は、出水口や水深が浅くなった所で行われる。出水口にはタモ網などがセットされ、下ってきた魚を次々に捕獲する。また、水深が浅くなり、動きが鈍くなったところをタモ網で捕獲する。捕獲した魚は真水で泥を吐かせ、魚の臭みが取れた後に、鯉こく・鯉のあらいで食を楽しむ。また、専門店に売り収益を上げる。泥を吐かせ臭みを取る期間は、池の土質と水質によって、数日から数週間と大きく異なる。

コイ・フナ


コイ・フナ・ナマズ漁
◆スジエビ(♂三cm♀五cm)とタモロコ(八cm)
 スジエビやタモロコを育てているため池は多い。いくつもの篭(かご)筌(うけ)に、鯉の餌か魚釣り用の撒き餌を入れて水中に沈めておく。約三〇分から一時間ほど経って引き上げると、篭筌の中にスジエビかタモロコ(篭の設置場所でどちらかが主となる)が入っている。スジエビもタモロコも水中で死ぬと腐敗が早いので、家の冷蔵庫に保管するまでは、死ぬことが無いように工夫をして持ち帰る。
 タモロコは九月から十月は、三〜四cmと小さく、十一月になると五cmを超し大きくなる。翌年用に種魚を採り小型の用水池で保存し、ため池の満水に合わせて放流する。料理はいずれも甘露煮が主流で、スジエビとタモロコを混ぜて料理する場合もある。

スジエビ(日吉池)


タモロコ(たばや)漁(日吉池)


タモロコ


種魚の保存


タモロコとスジエビの甘露煮
◆スッポン(スッポン科)
 時にはスッポンも捕獲される。深沼新池の池干しでは、甲羅の長さ三三cmの大きいもの(三八cmまでに成長する)が捕獲された。料理は一般的な料理法で行われる。専門店に売ることもある。近年、スッポンは川や農業用排水路でもよく捕獲されている。
 スッポンが繁殖した要因は、餌となるスクミリンゴガイ(通称ジャンボタニシ)の増殖にある。

 * ため池でも観られる外来種のスクミリンゴガイ(通称ジャンボタニシ)は、リンゴガイ科でタニシの仲間ではない。寒さに弱い。

甲羅の長さ33pのスッポン
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