四 紹介しておきたい動物
◆アカハライモリ(イモリ科)【準絶】
平成二十三年七月八日、櫛木にある比較的小規模の水田で、その水口と、その上方の水管の下でうごめく沢山のイモリに遭遇した。次々と水田から登ってくるイモリの数と水田の面積とで推定すると、一五〇匹は優に超す。これほどイモリが多い水田は珍しい。水口から、上へ上へと登っていくイモリの行動に不思議さを感じていたところ、水田の持ち主によると、「上の方に池があるから」とのことであった。生まれた池への帰巣本能で登っていることが分かった。池は水田を転用したもので、深い所で約二〇cmと予想外に浅かった。
また、山間部から遥かに離れている東小田下区石橋の水路でイモリを確認した。この水路には江川ダムの水が配水されていて、分水工にもイモリが確認されている。イモリの最初の確認から三年以上は経過していることから、卵あるいは幼体・成体が水とともに運ばれてきたものが、生命を維持できる環境で繁殖し始めたものではないかと推定している。
上方にある池に向かうアカハライモリ(櫛木)
◆ツチガエル(アカガエル科)【準絶】
ヌマガエルとよく似ている。腹面は暗灰色(ヌマガエルは白い)で背面のイボは粗く大きい。トノサマガエルと同じように、平野部の水田ではめったに見ることができなくなった。山間や山麓でも容易に見ることも少なくなった。
◆シュレーゲルアオガエル(アオガエル科)
気温や水温が比較的低い三箇山・櫛木・坂根の水田で見られるカエルである。アマガエルによく似ているが、アマガエルより一回り大きく、鳴き声はカラコロ、カラコロとよく響く。水田の畦や中の浅瀬に、白い泡状の液の塊の中にいくつもの卵を包んで産卵する。孵化の時期になると、泡が溶けてオタマジャクシが流れ出てくる。卵はタヌキに食べられることもある。
シュレーゲルアオガエル(櫛木)
◆マルタニシ(タニシ科)【準絶】
砥上、浦の谷の水田には、マルタニシが昔から絶えることなく住んでいる。平野部の水田と同じように、殺虫剤・除草剤は使用してきているし、減反を行ったこともある。平野部の水田と異なることは、@圃場整備はしていないA裏作は行っていない、の二点である。水路にはドジョウやゲンジボタルも住み続けている。昔からの自然が保たれている浦の谷である。
◆ミヤマガラス(カラス科)
大陸から冬鳥として十月に訪れる。一〇〇羽近くの群れを成して、電線に止まったり、水田に降りて餌を摂っている。食性は、留鳥のハシボソガラスに近く、穀類・豆類・昆虫類・ハゼの実・果実である。また、部分的に白色の模様のあるカラスが、時々群れの中に混ざっているが、別種のコクマルガラスでミヤマガラスよりも小さめである。
ミヤマガラス(山隈)
◆カササギ(カラス科)
佐賀県の地域にのみ生息していた鳥で、朝倉地方に生息するようになったのは、今から、およそ四〇年前(一九七五年ごろ)からと推定している。平野部の田畑と住宅がある場所で、電柱や落葉の樹木に巣をかけるようになった。特に、電柱への営巣は電気系統の管理に支障をきたしていた。トウモロコシ・トマト・スイカ・カボチャ・穀類などの農作物には、あきれるほど熟成時を的確に狙ってくる。昆虫類も餌にしているが、子育ての時期にはスズメを追っているのを良く見かける。鳥類の中でも、大きな脳をもっているだけに賢い。