三 ため池堤防の草原
イネ科の植物とノアザミやヒメジョオンが良く目立ち、その他様々な植物で草原を形成している。補虫網を数回振り払っていくと、蝶や蛾、蜂、甲虫類、バッタ類など様々な昆虫が入ってくる。水田の昆虫類が激減した中で、ため池堤防の草原は多種多様な小動物の命を守っている。
金山池の堤防
草原の無いコンクリートの頂上部分に、十数頭のハンミョウが群れていた。平野部では見かけなくなった昆虫で、珍しい光景である。両側の草原から出てきた餌となるアリやミミズ、他の昆虫の幼虫などが多いからである。
金山池堤防の草原
ハンミョウ
才ノ木西池の南側堤防
ジャコウアゲハが生息している。堤防には幼虫の食草ウマのスズクサが生育しており、葉に産みつけられた卵は、小さなルビーのようで美しい。成虫の♂は体から麝香を放ち、♀を引き付ける。ガの仲間のアゲハモドキは、この蝶の♀によく似ている。
才ノ木東池と才ノ木西池
ジャコウアゲハ♀
食草に産み付けられた卵
アゲハモドキ(ジャコウアゲハに酷似:ガ類)
上高場ため池の堤防
ため池の規模の大きい堤防と言えば、東池・中池・西池・整理池が連なる堤防である。夏は、カヤ類が大きく育つので、毎年二月の野焼き前に草刈りを行う。このときに、ノウサギやイタチが飛び出てきたことがあるという。西池の堤防内側でイタチの巣を一箇所確認した。
ため池堤防の野焼き(上高場)
野鳥のセッカはカヤで巣をつくる。草原には、餌となるクモ類や昆虫類も多いからである。いつも巣と周辺の草原を行き来し、上に飛ぶ
ときにヒッ、ヒッ、ヒッと鳴き、下降するときジャッジャッ、ジャッジャッと鳴くので、セッカの存在がすぐに分かる。水田も草原とよく似た環境のためよく飛翔している。