二 キツネ(イヌ科)【準絶】
平成二十年頃に親子のキツネと巣穴を見かけていたという地元の北原氏の情報をもとに、平成二十五年二月七日に現地調査を行ったところ、久光の金毘羅神社山道にある二番目の鳥居のすぐ上の右側で巣穴を確認した。二次林としての自然林の中である。約一六五平方bの面積に巣穴が二〇穴もあり、規模の大きい巣穴群である。貴重であるため、測量調査を平田・焼山・飯田で行い記録に残すことにした。
巣穴群(ピンク色の印)
巣穴2か所
測量調査後の二十六年十月までに、新たに二穴増え二二穴となった。これらの巣穴群は、古い巣の近くに新たな巣をつくり、年々数を増してきたと考えられる。ただ、現在の巣穴口の状況はアナグマの利用も窺える。最近は、この近くの畑がアナグマの被害を受け続けたため一頭捕獲されている。あまりにも数の多いこの巣穴の成り立ちを知るには、専門家による継続調査が必要である。キツネとアナグマ、さらにはタヌキによるサイクル的な使用が考えられるからである。
巣穴群の分布(久光)
平成二十年頃、高田集落東側の大豆畑で見かけたキツネは、城山丘陵地に住んでいるものと考えられる。近年では、平成二十四年の麦が熟れる頃、久光の田でキツネの姿が確認されており、平成二十五年十一月、キツネの鳴き声も確認されている。
キツネの存在は、必ずしも姿を見かける必要はなく、比較的短く強い独特の鳴き声(ギャーともウワッとも聞こえる)によって確認できる。畑嶋の宇田にある味噌池周辺では、早朝に姿を見かけることがよくあるという。味噌池周辺の森にも巣がある可能性は高い。
キツネの行動範囲を、動物研究家の白石哲教授(九州大学名誉教授)の退官記念誌の文献で調べると、一日に三km四方から七km四方とあった。獲物を求めてどの生態系にも現れる。母親と娘が、次の年の子育てをして、父親は一切子育てには加わらないとある。
森山と三箇山で、ほのぼのとしたキツネの話を聞いた。森山の深江家裏の小高い所に日当たりの良いみかん畑がある。平成二十三年頃、キツネが二匹その畑に来て日向ぼっこをしたり、遊びまわったり、うたた寝をしたりして一定時間を過ごしていた。現れる時刻は、いつも午後の二〜三時頃だったという。平成二十五年現在は現れていない。家の裏側上方には山麓線が通っているが、その北側に柳ヶ谷という場所がある。そこは、俗にキツネ谷と呼ばれていたので、この森で子育てが行われていたのであろうと深江氏は推察をされている。
平成十八年頃、三箇山の「夜須高原青少年自然の家」の敷地内に、三匹の子を連れた母ギツネが訪れている。日中にも関わらず、道路に出てきて遊んでいる姿があった。多くの人々が訪れるこの敷地で、人慣れが生じたのであろう。