六 昼に活動するイノシシ(イノシシ科)
イノシシは今や、農作物・果樹への被害を如何に防御するか、大変な問題となっている動物である。山では、ヤマノイモ(山芋)・クズの根・その他の植物の根や茎・ドングリ各種・ガの幼虫(例:カラムシを食べる蛾のフクラスズメ)・ミミズ・サワガニ・トカゲ・イモリ・カエル・ヘビ・動物の死骸などを食べる大変な雑食性である。ところが、イノシシは増殖により、餌不足となり人里に出現するようになった。久光では街灯に集まる昆虫を捕食している姿も見受けられている。民家の傍にあるタケノコ・サツマイモ・クリ・カキ・ナシ・ダイズ・カボチャなども荒らすようになった。一頭がカキやクリの木に登り、枝を抑え、仲間のイノシシが果実を食べるなど協働する場も見受けられている。また、稲田においては遊び場として稲をなぎ倒したり、実った籾を食い荒して大きな被害を与えている。♂のイノシシは独特の臭いがあり、荒された稲は臭くて食用にできないという。山間や山麓の水田や畑・果樹園は、防
御壁の設置や電線を張り巡らして、イノシシによる被害への対策をしている。しかし、年々イノシシの侵入域が広がっている。
山間部から遠く離れた孤山の城山丘陵地帯にもイノシシがいる。これは、平成の初めに人の手によって安易に放されたものが繁殖したものである。この行為は、城山丘陵地で生活してきた全ての野生生物はもちろん、イノシシに対する尊厳を損なうものである。動物・植物を問わず大量の餌を食い荒らすイノシシは、古から続いてきた孤山としての固有の生態系を激変させ、自然環境の学術的文化的価値を低いものにしてしまった。また、繁殖したイノシシは、土地を荒らし稲や他の農作物を荒らして、今や駆除の対象となっている。平成二十四年の十月十四日、笠堤周辺で体重一〇〇`・四〇`・二〇`の三頭のイノシシが駆除された。このとき猟犬がイノシシから大けがを負わされ病院へ運ばれているのに遭遇した。この丘陵にある笠堤では、雨後の朝の
道路には必ずと言っていいほど足跡が残されている。小隈付近の草場川にも出現し始め、あらゆる生態系に精通している状況である。
本町北部の山間や山麓にあるため池では、池の水面が下がって泥地が現れている所には、イノシシの乱れた足跡を必ずと言っていいほど見かける。イノシシは、カエルやヘビなどを捕食し、ぬた場としても利用している。弥永の大神池ではイノシシが二頭落ち込んで死んだとのことで、ため池によってはイノシシにとって危険な場所になっている。
イノシシは、一般には野行性と考えられているが、基本的に昼行性である。民家近くの餌を食べるために、人が家の中に居る時間帯を選び、二次的に夜行性を示している。昼間、笠堤南側の林で、餌を探している約七〇cmの若いイノシシに遭遇したり、坂根の車道から遠く離れた栗林では、栗が熟す時期には昼でもよく現れている。写真は、母親と三頭の子ども(瓜坊)が現れたときのものである。
イノシシの親(坂根)
イノシシの子(瓜坊坂根)
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