七 作物の味を覚えたホンドジカ(シカ科)
以前、鹿は英彦山一帯の深山でも、稀にしか見かけることができない幻の動物であった。しかし、今では本町の山間・山麓では、被害が出るほど増殖し駆除対象の動物となってしまった。狩猟関係者の話では、英彦山→小石原→馬見→古処山→筑前町のルートで増殖してきたとのことである。人里に現れるようになった理由は、温暖化による食草の増加、狩猟者が少なくなった、人里には美味しい食料が多いことを学習した、等々である。平成十年ごろからポツポツと人里へ現れはじめ、平成二十五年の現在では、夜間に民家周辺に出没するのが普通になっている。食性は植物である。ヒノキやスギの新芽や木の皮、アオキ、イヌビワ、ササの葉、草本植物等を餌としている。特にスギやヒノキは角でこすり、樹皮を傷め成長を著しく阻害したり、枯死させている。その被害は、年々大きくなっている。さらに、畑の野菜の味を覚えて、ホウレンソウ・白菜・サツマイモの葉やツルを好んで食べている。ミカンの幼木も被害に遭っている。
ヨウシュヤマゴボウの葉を食べるホンドジカ(上曽根田)
現在、山麓線を南側に超えることは少ない。しかし、平成二十四年六月十四日の暑い日、山麓線より南に位置する味噌池で、泳いでいるシカを勝山在住の人が車で通りすがりに目撃している。年々このような状況が増えることも予想される。
大己貴神社の社殿裏のスギ林には、ミミズを獲りにイノシシが多く出現していた。その後、シカが敷地内の林の下草を食べに来るようになって、イノシシが現れなくなっている。このようなイノシシとシカとの関係は、他の場所でも起きている。