三 筑前町の自然の宝物
人々の生活様式が様々に変化していく中で、動物や植物が生活していく場所が極めて狭くなってしまった。その中で、これらの生き物の命を繋いでいる場所が、くしくも人々の命を繋いできた「ため池」である。
ため池の水域とその周囲の堤防の草原や、二次林としての自然林によって、各種の動植物が絶滅を免れている。本町のため池は、山間・山麓・丘陵・平野に満遍なく分布しているのが大きな特徴で、その一つ一つが個性的であり、全体としては多様な生物を保護していることになる。
その代表として二例を挙げる。一つは、警戒心の非常に強い準絶滅危惧の「オシドリ」を容易に見ることのできるため池がいくつもある。もう一つは、日本古来のマルタニシ(準絶滅危惧)が、町内の多くのため池によって絶滅を免れ、生き延びている。「ため池」は農業遺産及び生物多様性などの学術的価値が高く、景観的にも人の心を癒すものが多い。
その多くは築造が江戸時代以前に遡り、祖先から代々受け継がれてきた。この「ため池」は、生態系サービスの様々な役割をもち、今や重要な自然となっている貴重な宝物である。