タニシは、私にとってそう身近な生き物ではなかったのですが、自分の知識の中では何故かポピュラーな生き物です。
実際に田んぼで「これがタニシだ」と認識したこともないし、誰かが取ってきたものを見た経験もないし、一般によく歌われている童謡や唱歌に登場することもないし、それにもかかわらず、不思議にも親しみを感じてきた生き物です。
強いて思い出すと、20代のころ飲屋さんで味噌煮のタニシを酒の肴として食べたこと、また、その酒席で先輩の方の「タニシ殿」という踊りを拝見させていただいたこと、日本昔話に登場する「タニシ長者」のテレビマンガを見たこと等で、その回数もそれぞれ1回程度です。
なぜ、私の知識の中ではポピュラーな生き物として感じるのか、よく考えると、う〜ん、不思議でなりません?皆さまは、いかがでしょう?
今年の6月中旬、朝倉市の近郊でタニシの存在を聞いたとき、まさか!の驚きと凄い!の感動とが全身を包んでしまいました。早速、タニシのいる場所に案内していただき、よく見ると、いる、いる!! 案内をしていただいた方が、田んぼに入り50個ほど拾ってくださいました。(写真下)
近くの田んぼも見て回ると、いる、いる!! 胸躍るひと時でした。
持ち帰ったタニシを、保育園の子どもたち、先生、保護者の方に見せたくて、その日の夕方水槽に放しました。翌朝、やはり子どもたちの関心の的になりました。タニシは昔、保育園のまわりの田んぼにも沢山いたこと、皆のおじいちゃんおばあちゃんが若い頃には良く食べていたこと、そして美味しかったこと、今は、よその国から持ってきたジャンボタニシが増えて、このタニシは姿を消してしまったこと、などの話をすると、子どもたちは目を輝かせて聞いていました。
継続してよく観察を続けているのが、不思議なことに0歳児クラスの子どもたちです。朝の体操が終わると、自分たちから進んでタニシの所へ行くのが日課となっています。クラス担任の保育士のお話によると、「観察できる目の高さがちょうど良い。」、「タニシの動きはゆっくりだがじっと見ていると結構動きがある。」ことが、0歳児の子どもたちの感覚にフィットしているからだということです。さすがに、幼児の心理を心得ていますね。
ところで、年長の男の子が登園途中に採ってきたジャンボタニシを2個水槽に入れていることをクラス担任から聞きました。よく見るけれども全く分かりません。見分けることができないままに、適当に5個ほど取りあげて小さな水槽に移して事務室に置いていました。
数日後のことです。0歳児クラス担任の保育士が、「園長先生、タニシとジャンボタニシの違いははっきりしていますよ。」と嬉しそうに知らせてくださいました。その違いは…
説明を聞けば「なるほど!」と簡単なことでした。殻の模様ばかりに注目していた私にとっては、正にコロンブスの卵でした。
「いや〜、凄いですね。ありがとうございます。」とお礼を述べると、「いえ、毎日観察を楽しみにしている子どもたちのお陰です。一緒に観ていると色んなことが分かります。子どもたちに感謝しています。」と言葉が返ってきました。
明確ではないのですが…
・ 耕運機の使用が多くなり、タニシが破砕されてきたようです。
※稲苗に被害を与えたジャンボタニシを撃退するために、耕運機のピッチを小さくし、回転を早くし、そしてゆっくりと進んで土を細かく砕く方法を取っているようです。
・ 用排水路のコンクリ化でそこでの住処も失いました。
・ サギ類の大型の野鳥の餌になりました。海岸での餌場を失い内陸部に侵入して繁殖し定住している。旧甘木市では、昭和50年代初期にコサギを見かけるようになり、珍しいものでした。
・ 米の生産力を上げるため、強い農薬散布が回数多く行われるようになった。
・さらには、除草剤の散布の影響が大きいと考えられます。
※ ジャンボタニシによる駆逐の影響についての是非は不明です。