近年、ホタルの舞が多くの地区で見られるようになってきました。それも山間部に限らないで、局所的ですが平野部でも乱舞の様子を見ることができます。素晴らしいですね。
この最も大きな要因は、家庭用の排水を処理して川に戻す下水道処理システムの進行です。それに加えて、地域の方々のホタル保存の努力によるものが多いようです。
(A)
家庭用排水の下水処理のみに力を注いだ地域・・・・・・・ 山間部に多い。
人々は自然環境を保ち、幼虫上陸の時期は梨の消毒散布をずらす等の配慮に努めている。
(B)
カワニナ(ホタルの幼虫の餌)を他の地域の大きな川から大量に採集してきて、小川に放流し、そこに飼育して育てたホタルの幼虫を放つ方法を取っている地域 ・・・・・・・ 平野部や平野部と山間部の境付近の地域に多い。
(C)
さらに、(B)の方法では長続きをしないことに気付いた地域では、蛹になる場所を保障する岸辺の土盛りの整備、ホタルが休息するための樹木や草原の整備(樹木の落ち葉はカワニナの餌になります。)、一般的な川の清掃活動等など、組織的に行っている地域です。
(D)
さらには、殺虫剤、消毒液、除草剤などの減農薬に本格的に取り組んでいる地域です。
昔は、ホタルの乱舞は山間部や平野部を問わず、至るところでホタルの乱舞がごく普通に見られていました。日本の高度経済成長に伴い生活が豊かになり、人々が自分で作った色とりどりの照明の明かりに群れている間に、乱舞をしていたホタルたちはいつの間にか消えていました。
ちょっと一息 一般にはあまり見ることのない“光景”と“昔”を紹介します。
ホタル幼虫の上陸
07年4月22日 朝倉市黒川でホタルの幼虫が上陸するときの様子を撮影しました。(下3枚の写真)
08年4月16日と17日の2日間、朝倉市楢原で観察しました。
・16日 無風小雨が断続的に降り続くたくさんの幼虫が上陸する
・17日 16日と同じ天気 極めて少なく探すのに困難
このことから、幼虫は一晩で一気に上陸することがわかります。上陸は穀雨のとき、淡いピンクの花梨の花の咲く頃です。
幼虫の上陸から約40日後の08年5月26日からホタルのピークを迎えました。
50数年ぶりにほたるかごを作ってみました。今は大麦がないので小麦わらで作りました。
◎ホタルだけではなく、多種多様な水生動物が生育できる環境に近づいていることを意味しています。
本来、その地域に生育していた水生動物が復活するためには、
☆ 人が使用する洗剤や農薬などの化学物質を徹底して水に流さない工夫をする。
●家庭で使用する洗剤や油 ●農薬 ●企業用化学物質や油
☆ 小川や河川を自然の状況に近づける改修を行う。
●農業用の用水路や排水路の三面側溝 ●いろいろな魚が棲める構造
☆ 川岸に多様な植物が生育している状況の保存や改修を行う。
☆ 小川や河川、山林などに不法投棄をしない人の倫理観・道徳心の回復
生物が多種多様に棲んでいる環境があるということは、人にとっても良い環境です。
人の生活の便利さ、快適さのために自然を破壊するのではなく、あらゆる多種多様な生物にとって便利さ、快適さのあるより自然な環境それを保障していく義務が自然の一員であるホモサピエンス(ヒト)にあります。
吉森商会・稲葉木材と国道500号線にはさまれた小川の両岸には、幾種類もの雑木が大切に保存されている。
甘木から秋月に向かう。途中、長谷山交差点から右折して上秋月に向かい間もなくすると、国道500号線の右側に小川があり、その両岸にはいろいろな種類の雑木が大切に保存されている場所があります。(
アカメガシワ、ハゼ、ヤナギ、ネムノキ、アケビ、ミカン、ウメ、サクラ、ほか数種)
スケールは小さいのですが、ここには毎年のようにホタルが発生して、近所の方やこの場所を知っている人々の心を癒しています。雑木の存在から、このことを熟知している地域の方々の優しさと温かい配慮を感じます。この雑木が無ければホタルの生存はありません。
全国各地、このような環境の雑木が、訳もなくわざわざ伐採された所が数え切れないほどあったことでしょう。高度経済成長は、自然へ配慮する心は成長させていませんでした。