6月14日に1頭確認され、その後27日に2頭、7月2日に3頭、9日には5頭、16日には7頭(うち隣の環濠に1頭)と次第に数を増してきました。
今年(2007年)は、公園内の広範囲でチョウトンボの飛翔が確認されました。午後、樹梢で優雅に飛翔するチョウトンボの群れを眺めていると、自然のなかに生きるありのままの生き物のよさをつくづく感じます。
この公園で最初に発見したのは、2004年8月11日午後3時過ぎです。猛暑の中、樹梢の上高く舞っていました。右はそのときの写真です。その後は一度も発見されていなかったので、一時的な滞在であったのかと少々落胆していました。ところが冒頭に述べましたような出現で、この環濠に定着したことがわかりました。
@前翅に比べ後翅が極端に広い。
A強い直射日光のもとでは、金属光沢を放っている。反射光の角度の変化で色に変化が見られた。
B環濠の水面を往復又は周回しながら飛翔している。
C交尾や縄張り争いのために同種のトンボが近づくと、それまでの飛び方とは考えられない猛スピードで戦うようにして共に飛び去る。カシャカシャと翅音が聞こえる。 ※他種のトンボに対しては大きな反応は無い。
D交尾をするときは猛スピードの飛翔の中、瞬間に行われた。接合の時間は短く、長くて1分前後であった。
Eメスは交尾直後に産卵を始める。オスはすぐ上空で他のオスがメスに接近しないように警戒していることもあるが、多くのオスは交尾後には離れてしまっている。
F日中の暑いときには、樹梢の高いところをゆっくりと舞うように飛んでいた。(このため、ヒコウキトンボとも呼ばれています。)夕方6時過ぎまでその樹梢で飛翔している固体もある。
G午後は、飛翔疲れをすると樹梢の枯れ枝で休息をとる習性があるのに気付きました。(07.7.12)
H早朝も樹梢を飛翔することが判明しました。(07.7.27 7時30分)
I遅まきながらやはり記しておきます。チョウトンボは驚くほどか弱いトンボでした。去る8月3日の平塚川添遺跡公園で行ったワクワクワ−クの昆虫観察会で、捕獲したチョウトンボを大きいビニル袋に入れて観察していると元気が無くなった感じがしたので、あわてて外に出し草の止まらせようとしたが、すでに遅く間もなく息絶えました。ビニル袋に入れた時間は1分ほどだったのですが、ほんとに可愛そうなことをしてしまいました。写真からは想像できないことでした。何と無知なこと!(08.10.20)
6月中旬に現れて9月中旬ごろまで見られます。是非公園を訪れてご覧になってください。公園の職員の方に案内していただくと確実に見ることができます。
天気が良く猛暑の日は、早朝より活動開始します。7月16日の晴れの日は8時には6頭が入り乱れての飛翔を行っていました。12時ごろから上空へと舞い上がるものが現れ16時過ぎまで、樹梢の上高く舞い、その後は、また水面上で活動しています。曇った日の暑くないときは、一日中水面上で活動している固体もいます。雨風の強い日や夜は、私自身はまだ確認していませんが、池の近くの樹木の葉の裏などに止まって過しているそうです。
私が最後にチョウトンボを見たのは、約43年前、朝倉市屋形原に在る堤でした。そして、次に見かけたのは一昨年の夏、平塚川添遺跡公園でした。私にとっては実に長い間、幻のトンボだったのです。それというのも自然の池や人工の堤が開発のために埋没されて、さらには多種多様な農薬の使用が多くなり、他のいろんな生き物と同じようにチョウトンボもこれらの影響で姿を消していったのだろうとばかり思っていました。
平塚川添遺跡公園の環濠の水は地下水を使用し、樹木等の消毒も行いません。陸上の動物だけでなく、水中の動物が生命を維持し、命を育んでいくのにとてもすばらしい環境となっています。
国内の至る所の水環境を自然の状態に再び戻していく保全等をすれば、水中の生き物は甦る力をもっていることをチョウトンボが証明しているように感じてなりません。観賞のため自然の川や湧水池にコイを入れているのを見かけることがありますが、これも、自然界のバランスを崩して、絶滅危惧種を増大させることにつながるので慎むことが大事です。
人間が人間だけの都合のために造った環境が、自然の多種多様な水生の動植物を絶滅へと進行させていくとき、それがやがて人間自身を滅ぼすことにつながっていく法則があることを知っておかなくてはなりません。