飯田大和の自然教室
<<前のページ 次のページ>>

bP0 準絶滅危惧「カワモズク」(初稿2006.12)
2007.10.20記述変更

 2007年3月の日本藻類学会において、ミドリカワモズクがアオカワモズクへ、ナツノカワモズクがチャイロカワモズクへと和名を変更し、また、絶滅危惧U類から絶滅危惧となる。


チャイロカワモズク(左褐色)アオカワモズク(右緑色)

 '06〜'07にかけての今冬での観察では、オキチモズクと同じように昨冬に繁茂していた場所からすっかり姿を消してしまった状況を生じている。3ヶ年の観察から見ると、数年繁茂した後はすっかり姿を消す傾向にあるようだ。(07,2.28追記

 オキチモズクが生育している場所で、絶滅危惧U種のカワモズクも生育していることが分かりました。カワモズクは、オキチモズクの生育条件に似ていますが、流速が比較的小さいゆるやかな流れの水域に多く生育しています。

 吉田忠生博士のお話によるとカワモズクの種類については、専門的な分類にまだ研究の余地があるとのことですが、朝倉市内で発見されたものは、ミドリカワモズクとナツノカワモズクと同定され、その2種類を確認しています。(上記述の通り、2007年にミドリカワモズクがアオカワモズクに、ナツノカワモズクがチャイロカワモズクに和名変更している。)      


≪ 生育期間は? ≫

 オキチモズクと同じように、初秋から成長を始め冬季に成長し初夏の頃には消えています。冬季に成長をするのにナツノカワモズクと名付けられています がその理由は分かっていません。(前述の通りナツノがチャイロへと変更された。)
 2種のカワモズクは成長の時期にずれがあり、チャイロカワモズクが先に生育を始めてアオカワモズクが遅れて成長を始めます。その差は3〜4週間程度のようです。


緩やかな流れ
≪ 生育分布は限られている? ≫

 限られてはいます。が、旧甘木市内での私の調査では、オキチモズクの分布よりもかなり広範囲に分布していることが分かりました。

 馬田地区では、多くの農業用排水路、陣屋川、小石原川、二又川などで確認しています。

 馬田地区以外の場所では、甘水(新川)、中島田(東谷)、桑原(神社そばの湧水池から流れ出た水路と清水川の2ヶ所)、桂川(下長田橋付近)などです。

 今後の調査で、朝倉市の各地で広く確認できるのではと期待を膨らませているところです。


☆カワモズクの生育状況
 ○下浦農業用排水路
  ・A区、B区、C区、D区では、毎年多くの生育が観察される。チャイロカワモズクが多く、アオカワモズクが2月より多くなる。
   08,12,17現在チャイロカワモズクが最盛となっている。
 ○下浦電車沿用排水路
  ・年によって生育する。09,12現在未確認
 ○陣屋川
  ・年によって生育する。09,12現在未確認
 ○上浦用排水路
  ・年によって生育する。09,12現在未確認


農業用排水路(馬田)


陣屋川(下浦)


桂川(下長田)


東谷(中島田)


≪ 生育場所を発見するポイントは? ≫

 とにかく湧水がある場所を探すことです。典型的な場所の例では、中島田の東谷と桑原の清水川です。どちらも扇状地の伏流水が湧き出てできた小川です。馬田地区を流れる陣屋川も三輪地区や牛木地区から始まる湧水がしだいに集まってできた川です。
 しかし、安川の甘水地区を流れる新川は山地に位置する谷川ですから、今後は山間部にもくまなく調査を進めていくことにしています。


≪ 生育場所を確認していく意義は? ≫

 「水質の状況判断」と「種の保存のための環境保全の在り方」の指標にすることです。
 馬田下浦地区では、住宅地を通る水路の水が以前の状況に比べるととてもきれいになっています。水が透き通ってきらきらと美しく光っています。その要因は、下水道工事が進み家庭用の排水が激減してきたからです。


電車沿いの水路(下茶屋)

 下茶屋地区を過ぎた電車沿いの水路にはカワモズクが沢山生育しています。その理由は、水質が良いことに加えて、下茶屋の人たちが毎年1回、丁寧にきれいに清掃をされていることにあります。そのため、水の流れがよくカワモズクにとって生育しやすい場所となっているのです。

 この清掃がカワモズクにとっての環境保全の役割を果たしています。


≪ モズクだったらこれも食べられますか? ≫

 ええ、オキチモズクと同じように、昔、三杯酢で食べていたのだそうです。オキチモズクはシャキシャキ感でしたが、カワモズクは口に含むとヌルヌル感がします。飲み込むまでには至っていませんので推定ですが、好みの濃さの酢醤油で食べると美味しいのではないかと思います。しかし、家庭用排水や農薬が減少したもののまだまだ、ドジョウの姿が多く見られる状況になれば試食してみるでしょう。

 カワモズクが市内で昔食材として使われていたことが、筑前國續風土記拾遺書(二十四)下座郡下山見村の欄に、『○土産 川藻づく 谷川筋に生ず。』と記録されていることが07年2月のはじめに市立図書館で分かりました。
 07,2,26に現地の川に入って調査をしましたが確認されませんでした。たまたま谷川そばでお会いした、山見手前の仁鳥に住んでいる川上博さん(87歳)にお尋ねしたところ、若い頃に食材にしていたその裏づけを聞くことができました。
 調理法は、カワモズクを乾燥させて保存しそれを味噌汁に入れて食べていたこと、また、三杯酢で食べていたということです。とても美味しかったそうです。 川上さんと同じく仁鳥で生まれ育った40歳代の方がその場におられましたが、カワモズクについては全く知っておられませんでした。(
07,2,28追記)
 


チャイロカワモズク(接写撮影)


アオカワモズク(接写撮影)

◎ 桑原の清水川は、カワモズクが成長盛んな冬季に水が枯渇する状況が近年生じています。しかし、湧水が生じれば翌年でも再び生育を始めます。 すばらしい生命力です!


< カワモズクに学ぶ人生訓 >

カワモズクの生命力に感じて
人生辛抱が肝心、合わせて良い辛抱と悪い辛抱の熟慮も肝心


< カワモズクの分類と名称 >

分類:ウミゾウメン目 (紅藻類)  カワモズク科
学名:Batrachospermum arcuatum Kylin 和名 チャイロカワモズク
学名:Batrachospermum helminthosum Bory 和名 アオカワモズク

<<前のページ 次のページ>>